しあわせの中の子ども
西武線の車両の中で目にした「ちひろ美術館・東京 開館30周年」の広告につられ、先日初めて石神井にあるちひろ美術館へ行った。 今回、美術館に行ってみて初めて知った。ちひろはかなり「ええとこの子」だったのである。
ちひろの描く子どもの姿はどれもふんわりとした優しいタッチで、幸福の中にいる天使としての子どもの姿である。それゆえか、プチブルの甘い絵だとの批判もあったようだ。 恵まれた環境で、きちんと愛されて育った人だけが持つことのできる強さと優しさというものがあると、わたしはかねがね思っていて、そういう人に憧れと尊敬の念を抱いているのであるが、わたしがちひろの絵に惹かれる理由もきっとそこだったのだなということがよくわかった。
ちひろの絵はわりに好きで、ポストカードなんかを見かけるとついつい買ってしまったりはするのであるが、ちひろの絵本を持っているというわけでもなく、ちひろの人となりについての知識も皆無だった。
父親は陸軍の技師、母親は女学校の教師で、本人も女学校を卒業している。戦時中も暮らしぶりは裕福であった様子。
戦後、本格的に絵の仕事をするようになったちひろであるが、その時代にあってはかなり進歩的女性であったと思われる。松本善明との再婚の際には、愛の誓いというような甘い表題でこそあれ、婚前契約ともいえる文書を交わしている。「お互いの立場を尊重し、特に芸術家としての妻の立場を尊重すること」というなかなかの一文もあった。
戦後すぐに日本共産党に入党したのは、考えるところがあってのことだったのだろうが、「子どものしあわせ」という願いを成就させよう、それを世の中に訴えようと思うとき、その手段として不幸の中の子どもを描くのではなく、幸福の中の子どもを描いたことは、ちひろの育ちの良さの表れだと思う。
後年には、ベトナム戦争の戦火の中の子どもを描いてはいますが。
わたしもちひろの絵がすきです。アルバイトをして初めて買ったのがちひろの画集でした。彼女の強い意志に裏付けられた優しさが何より好きです。
絵本の挿し絵なども手がけていますが、あの絵は意外と子供受けしないんだそうです。(児童書専門店主の受け売りですが)
長野のちひろ美術館は広くて良いところですよ。
by aki (2007-10-07 20:14)
akiさんもちひろの絵がお好きでしたか。
ああいう淡いタッチの絵は子どもの絵本向きではないですね。
視覚の機能がまだ発達途中のため、子どもには線のしっかりした原色を使った絵本の方がよいそうです。ディック・ブルーナのような。(こちらも受け売りですが)
安曇野の方も機会があれば行ってみたいです。
by デクノボー (2007-10-08 22:26)