SSブログ

フロランス・ビュルガ著『猫たち』 [本]

フロランス・ビュルガ著, 西山雄二・松葉類訳『猫たち』法政大学出版局 2019年5月刊

三軒茶屋にある書店Cat's Meow Booksさんでジャケ買いした一冊。
夢想読書会さんの「ネコ」がテーマの回に参加するにあたって読んでみました。

動物哲学の第一人者である著者が、哲学者や文学者たちの言葉を引きながら、人間と猫との関わりについて考察していきます。
一定の距離を取りながら冷静な分析が行われてはいますが、なんだかんだいって著者もやっぱり猫が好きなんだろうなという気がしました。

ボードレールの猫に関する詩がいくつかあるようなので読んでみたい。その中の「猫たち」という詩については、言語学者のヤコブソンと人類学者のレヴィ=ストロースが詩言語と神話の構造分析を行っているということで、併せて触れてみようと思います。

https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-13028-1.html
0CBEA1B5-4E89-438F-B1C0-21D2E2C57CF7.JPG
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

「桐島、部活やめるってよ」 [本]

朝井リョウ 著 『桐島、部活やめるってよ』 集英社 2010.2 ¥1,200
初出:「小説すばる」2009年12月号(抄録)

著者の朝井リョウは1989年生まれの大学生。タイトルの「部活」ということばからわかるように高校生活を描いた青春小説です。

バレー部のキャプテンである桐島が部活をやめるらしいという小さいようでいて、高校という狭い世界の中では大きなニュースの周辺で、それぞれの思いを抱えながら青春を生きる5人の高校生の物語。実は桐島自身は彼らの話の中にしか登場しません。
aiko、チャットモンチー、『週刊真木よう子』、『ジョゼと虎と魚たち』、『BABEL』、『めがね』などのワードも織り込まれ、著者は自身の高校生活の淡いを切り取っておきたかったのだろうなと思う。5人の登場人物はそれぞれのキャラクター設定がありつつも、著者自身が高校時代に感じていたであろう感覚が全員に通底している。

卒業後数年でこの作品が著せたことは著者にとってすごく大きな意味があるにちがいない。

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ

  • 作者: 朝井 リョウ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/02/05
  • メディア: 単行本


nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:

「高慢と偏見」と偏見 [本]

ジェイン・オースティン著 中野康司訳 『高慢と偏見』 ちくま文庫 上・下 2003.8
ジェイン・オースティン、セス・グレアム=スミス著 安原和見訳 『高慢と偏見とゾンビ』 二見文庫 2010.2

メロドラマ・昼ドラというまさに偏見をもっていたため読んだことのなかったオースティン。映画「プライドと偏見」も文芸ロマンの趣きだったし。読んでびっくり。全然メロじゃなかった。昼ドラというより渡鬼。いやおもしろかった。

ゾンビの登場する「高慢と偏見とゾンビ」もおもしろい。八割方オースティンの原文のままというのはなかなかの商売ですが、アイデアの勝利でしょうか。

高慢と偏見 上   ちくま文庫 お 42-1

高慢と偏見 上 ちくま文庫 お 42-1

  • 作者: ジェイン オースティン
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2003/08
  • メディア: 文庫
高慢と偏見 下   ちくま文庫 お 42-2

高慢と偏見 下 ちくま文庫 お 42-2

  • 作者: ジェイン オースティン
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2003/08
  • メディア: 文庫
高慢と偏見とゾンビ(二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

高慢と偏見とゾンビ(二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

  • 作者: ジェイン・オースティン
  • 出版社/メーカー: 二見書房
  • 発売日: 2010/01/20
  • メディア: 文庫


nice!(2)  コメント(3) 
共通テーマ:

「波打ち際の蛍」 [本]

島本理生著 『波打ち際の蛍』 角川書店 2008.7 ¥1,300

近しい人から受けた暴力のトラウマを描いた作品の多い島本さん。
2005年刊の『ナラタージュ』は共感をもって読んだのですが、自分自身の成長の過程で少しトラウマ系の物語からは距離を置きたくなっていたため、それ以来離れていた作家です。
人に薦められて久々に手に取った『波打ち際の蛍』は、やはり近しい人からの暴力の傷を抱えた女性が主人公。

恋人から暴力を受け、それ以来男性と恋愛関係になることはもちろん、他人との親密な関係を築けずにいる麻由。通っている相談室で少し年上の蛍という男性と出会う。少しずつ親しくなっていく麻由と蛍だが。トラウマを抱えた者同士の痛々しくも切ない恋愛の物語。

トラウマにがんじがらめになり身動きが取れなくなりながらも、ある意味ではトラウマに護られていた世界から、一歩を踏み出すような静かな希望を感じさせる清らかな作品でした。
作品の雰囲気と表紙のイラストがとてもマッチしています。

波打ち際の蛍

波打ち際の蛍

  • 作者: 島本 理生
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/07/31
  • メディア: 単行本


nice!(1)  コメント(1) 
共通テーマ:

自意識過剰バンザイ [本]

リブロ渋谷店で催された、本谷有希子サイン会へ行く。
『あの子の考えることは変』(講談社 2009.7)出版記念。

本谷さん、小柄でお顔も小さく、アイドルチックなとってもかわいらしい方でした。
客層は、自意識が邪魔してアイドルのサイン会に行ったりはできないけど、演劇人で小説家の本谷有希子のサイン会ならアイドルオタクとは一線を画すことができてプライドも守れるといった風情の男性7割。
自意識過剰な人間にとっては、楽しくてしかたのない作品を創り出してくれる本谷さんなので、納得のファン層か。もちろん、わたしもそのひとり。

最新作も、自意識過剰ワールド炸裂。

あの子の考えることは変

あの子の考えることは変

  • 作者: 本谷 有希子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/07/30
  • メディア: 単行本


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

世界のなぞなぞ [本]

立川ecute内の書店「PAPER WALL」にて、懐かしい本に出会った。
シリーズ世界のなぞなぞ「赤のなぞなぞ」*1、「白のなぞなぞ」*2、「黒のなぞなぞ」*3
なぞなぞ、クイズ、パズルの大好きだった子ども時代、多湖輝「頭の体操」シリーズ同様、何度も何度も図書館から借り出した本である。

感激のあまり手にとってみて、編者が柴田武、谷川俊太郎、矢川澄子、さし絵が佐々木マキ、村井宗二、長新太、装幀が安野光雅であることを知る。
子ども時代はなぞなぞの本として読んでいたが、大人になって読んでみるとこれ、詩集である。 「PAPER WALL」でも「詩」という棚に並んでいた。
たとえば「目」というこたえを持つ各国のなぞなぞがまとめて並べられているのだが、なぞなぞの問いの方が「目」について詠んだ詩という風情なのだ。国による表現の違いもおもしろいし、「はげ頭」というこたえのなぞなぞなんかは結構笑える。

1986年が初版だが、今回購入したものも初版で、なんと当時のものと思われる読者カードと新刊案内のチラシが挟まっていた。時を経て自分の手元に届いた感があって、なんだか嬉しくなった。どこの倉庫に眠っていたのだろうか。
現在の刷次はどれくらいなのだろうと思い、ジュンク堂書店池袋本店の棚の現物にあたってみたところ、そちらも初版のものだった。初版時に何部刷られたのかわからないが、増し刷りしていないのかな。
ちなみにジュンク堂書店池袋本店では、2階趣味・実用書コーナーの「クイズ」の棚に並べられていたが、詩集の棚か児童書の棚に並べた方が売れそうである。

シリーズ世界のなぞなぞ


*1 柴田武, 谷川俊太郎, 矢川澄子編; 佐々木マキえ 『シリーズ世界のなぞなぞ 1 赤のなぞなぞ』 大修館書店 1986.4
*2 柴田武, 谷川俊太郎, 矢川澄子編; 村井宗二え 『シリーズ世界のなぞなぞ 2 白のなぞなぞ』 大修館書店 1986.4
*3 柴田武, 谷川俊太郎, 矢川澄子編; 長新太え 『シリーズ世界のなぞなぞ 3 黒のなぞなぞ』 大修館書店 1986.4


nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:

可愛い女の子のはなし [本]

わたしは、いちおう女子である。いちおう女子、おそらく女子、おおむね女子、何をもって女子? である。いや、女子って歳じゃないんですけどね。
女子だけど可愛い女の子が好きなんです。可愛い女の子っていいですよねぇ。見てると心が和みます。
日産サニーCMの一色紗英、爽健美茶CMの菅野美穂、「ロミオ&ジュリエット」のクレア・デインズ、「ロボコン」の長澤まさみ、最近だと堀北真希に戸田恵梨香。嗚呼、可愛いって素敵。

残念なことに、女子の友人たちと可愛い女子話で盛り上がったという記憶はわたしにはないのですが、柴崎友香『主題歌』(講談社 2008.3刊)の主人公たちは、可愛い女子話で盛り上がっています。スカーレット・ヨハンソンにレストランの店員の女の子、松坂慶子。
可愛い女の子について女子同士で語るふんわりとした楽しさが小説全体に流れています。

男子が可愛い女の子の話で盛り上がるときって、女の子その人自体のことは実はどうでもよくって、可愛い女の子の話で盛り上がる「オレたち」の部分が重要なのだろうけど、女子同士の場合はどうなのかな。男子と同様に、盛り上がってる「ウチら」という部分ももちろんあるけれど、語られている可愛い女の子に対する憧れだったり、ほのかに感じている友情だったりを込めることに意味があるような気もします。
可愛い女の子について語る女子のメンタリティは、「花とアリス」のように女の子同士手でをつないで歩くメンタリティと似たものなのかも知れない。

主題歌

主題歌

  • 作者: 柴崎 友香
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/03/04
  • メディア: 単行本


タグ: 小説
nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:

小説家対翻訳家 [本]

出がけにかばんの中に、小川洋子著『博士の本棚』(新潮社 2007.7刊)を入れ、電車の中で読む。雑誌や新聞に掲載された書評だったり、本にまつわるエッセイだったりをまとめた本だ。
小川洋子さんの小説は大好きでおそらく全作品を読んでいるとは思うが、エッセイを読むのは初めてだった。ところが、これがあんまりおもしろくない。
なぜおもしろくないのか、よくはわからないけれど、取り上げている作品と小川さんとの距離が親密すぎるせいかもしれない。

残念ではあるが半分ほど読んだところで、リタイアすることに。そうなると帰りの電車で読む本がない。ということで、出先で1冊購入。
岸本佐知子著『気になる部分』(白水uブックス 白水社 2006.5刊)。
ニコルソン・ベイカー『中二階』やジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』などの訳書がある翻訳家、岸本佐知子さんのエッセイ集。これがめっぽうおもしろい。
電車の中で読みながら、ニヤニヤしたり鼻から笑いの息が漏れてしまったりして、隣に座る人から怪訝な顔で見られるも止められず。

小説家と翻訳家のエッセイ対決、翻訳家に軍配。

博士の本棚

博士の本棚

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 単行本
気になる部分 (白水uブックス)

気になる部分 (白水uブックス)

  • 作者: 岸本 佐知子
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 新書


タグ:
nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:

もてあます [本]

川上弘美 著 『真鶴』 文藝春秋 2006.10
初出:「文學界」2005年2月号~2006年6月号

女性が好きな女性作家。20代女性の第1位「江國香織」、30代女性の第1位「川上弘美」。
これは、わたしの勝手なイメージです。こんな調査があるのかどうかは知りません。まぁいくらでもありそうです。こんな結果なのかどうかも知りません。まぁそう遠くはなさそうです。
女性が好きそうな女性作家はついつい食わず嫌いになってしまうのですが、装丁に惹かれ、初めて手にした川上弘美さんの小説が『真鶴』です。

この小説、読み進んでいくと、うっすらとした息苦しさを感じます。
主人公の女性”京”は呼吸が浅いんです。読みながら、自分の呼吸のリズムが京の呼吸のリズムに同調してしまい、息苦しくなるのです。川上弘美の文体にはめられました。

おもしろかったのが、”京”の人との距離感、からだとからだの距離のとらえかたです。
失踪した夫”礼”との距離感、夫の失踪後ちかしい関係となった”青茲”との距離感、そして、思春期の娘”百”との距離感。
特に”百”に対する”京”の距離の感じ方は、こんな風に感じてしまうのがどこか怖いがために、子をなすことに怯えている自分自身と重なる部分があって、興味深く読みました。
きっと”京”は女としての自分のからだをもてあましているのです。そして、女の人はみんなこんな風に、もてあましているのだろうなと思います。わたし自身も同じようにもてあましているのでよくわかります。

と、「からだ」について意識させられる小説でした。
子をなさずに女としてのからだをもてあましている30代女性であるわたしは、こんな感想を持ちました。だから、やっぱり30代女性に薦めたい一冊です。
子をなした女性や、男の人は果たしてどんな風に感じるのかしら。

川上さん、食わず嫌いしてごめんなさい。

真鶴

真鶴

  • 作者: 川上 弘美
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 単行本


タグ:小説
nice!(0)  コメント(4) 
共通テーマ:

『世界屠畜紀行』 [本]

内澤旬子著・イラスト 『世界屠畜紀行』 解放出版社 2007.2

『赤目四十八瀧心中未遂』という映画を観て、肉を扱う仕事と差別に関し思うところがあったときに、立ち寄ったジュンク堂書店池袋本店で屠畜関連の特集が組まれていて平積みになっていたので購入。
著者の内澤旬子さんがTBS「情熱大陸」に出演されるなど、最近話題の書となっているようです。

魚は切り身の状態で海を泳いでいると思っている人をわたしは笑えない。さすがに切り身が泳いでいないことは知っているが、魚をおろせないからである。魚をさばくのはもっぱらスーパーマーケットの鮮魚担当者におまかせ。肉にいたっては、牛や豚はもちろんのこと鶏もさばいたことはないし、さばくところを見たこともない。今まさに口にしようとしているその肉が、どういう手順を経てここにたどりついたのかに思いを馳せることなどないまま、無邪気においしく食している。

著者の内澤さんは、イラストルポライター。
もともと工芸製本が趣味で、ルポ業のほかに工芸製本のワークショップを行ったりもしている。その製本の作業で革を扱うため、革なめしの工程を見たいという思いが、本書の取材を行うきっかけの一つでもあったそうだ。
日本では、屠畜の仕事に関わる人々が差別を受けてきた歴史がある。肉を食べることには伴わない忌避感が、なぜさばくことにはつきまとうのか、日本以外の国や地域ではどうなのかという疑問を出発点に、内澤さんは、韓国・バリ島・エジプト・チェコ・モンゴル・芝浦と場・沖縄など世界の屠畜の現場を訪ね歩く。

内澤さん自身あとがきで「屠畜という営みを心から、たぶん当事者以外ではだれよりも愛している」(p.363)と語っているように、著者が現場をワクワクしながら敬意を込めて見つめている感じが、文章からもイラストからも伝わってきて、おもしろく一気に読んでしまった。
出発点は屠畜の仕事と差別でありながらも、「まず屠畜という仕事のおもしろさをイラスト入りで視覚に訴えるように伝えることで、多くの人が持つ忌避感を少しでも軽減したかった」(p.363)というねらいは、少なくともわたしに関しては大成功だった。牛や豚や羊がさばかれ精肉になる過程を詳細なイラストで紹介されても、読後まず思ったのが「お肉食べたい」だったからである。

生き物を殺して食べるというのはどういうことなのかを考えるヒントがたくさん散りばめられているので、一つ一つ拾いながらもう一度読んでみようと思う。
そういえば、最近きちんと「いただきます」を言っていないなぁと反省。

(7月17日23:20追記)
ジュンク堂書店池袋本店での屠畜関連の特集は先月の話なので、現在は行われておりません。

世界屠畜紀行

世界屠畜紀行

  • 作者: 内澤 旬子
  • 出版社/メーカー: 解放出版社
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 単行本

nice!(0)  コメント(2) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。