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名画座と二本立て [映画・DVD]

名画座というと、映画好きの若者が通いつめる場所というイメージを持っていた。わたしはたくさん本を読んだり映画を観たりすべき年頃にそれをしなかったので、若い頃に名画座というところに行った記憶がない。名画座どころか映画館自体にもきっと数えるほどしか行っていない。下高井戸シネマやシネマヴェーラ、ギンレイホールなどに行くようになったのはここ数年の話だ。

名画座と二番館の区別がいまひとつついていないのだけれど、そういう場所で映画を観るのが好きだ。なぜ好きかといえばおそらくお客さんの雰囲気なのだと思う。封切直後のロードショー館はお客さんのワクワク感とかやる気みたいなものが漲っていてちょっと苦手なのです。もちろんそういう場で楽しむべき映画はあるし、みんなで楽しむという映画の楽しみ方もあるとは思いますが。そこへいくと二番館なんかは、映画好きではあるけれどそれほど気合の入っていない感じの客層であるような気がして居心地がよいのです。

前置きが長くなりましたが、kenさんの「もしもアナタが名画座の館主だったなら 【TB企画】」を拝見し、あれこれ思いを廻らせました。思い出を呼び起こす素敵な企画です。というわけで、二本立てで観た映画を思い出してみる。といっても前置きしたようにそれほど昔の二本立てではありませんが。

『時をかける少女』と『サマーウォーズ』 於・早稲田松竹
このときは細田作品二本立てでしたけど、大林監督・細田監督の『時をかける少女』二本立てやってくれたら絶対観にいくなぁ。でもきっとベタ過ぎてどこもやってくれない。

サマーウォーズ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: バップ
  • メディア: DVD
時をかける少女 通常版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • メディア: DVD
時をかける少女 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: PI,ASM/角川書店
  • メディア: DVD

『4ヶ月、3週と2日』と『やわらかい手』 於・新文芸坐
二本立てって、二本のうちの一方を観たくて行く場合もありますが、ついでに観たもう一本が思わぬ掘り出し物だったということがあります。それがわたしにとっては『やわらかい手』。
ロンドン郊外で暮らす平凡な主婦マギーが、難病の孫の手術費用を工面するために仕事を探すが、年齢で断られたり賃金が安すぎたり。そしてたどりついたのが、壁にあいた穴越しに手で男をイカせる”ラッキー・ホール“の風俗店。そこでなんと売れっ子になってしまうマギー。
世間知らずのマギー同様、そんな風俗があることも知らなかったのでおもしろかったです。っていうか壁にあいた穴越しってそんなことでもいいんだという話はさておき、思いがけず人生が転がっていく、地味ながら温かい佳作といった作品でした。

4ヶ月、3週と2日 デラックス版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD
やわらかい手 スペシャル・エディション [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ビデオメーカー
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『誰も知らない』と『鉄コン筋クリート』 於・シネマヴェーラ
シネマヴェーラだったので二本立てではないのですが、「子供たちの時間」と題した企画のうちこの二本を観ました。二本の振り幅がありすぎて、『鉄コン』にはついていけなかったという苦い思い出。

誰も知らない [DVD]

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  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • メディア: DVD
鉄コン筋クリート (通常版) [DVD]

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  • 出版社/メーカー: アニプレックス
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『帝銀事件 死刑囚』と『日本の黒い夏 冤罪』 於・新文芸坐
冤罪をテーマに1948年に起こった帝銀事件と、1994年に起こった松本サリン事件を題材にした熊井啓監督作品。
1964年と2000年の映画なのですが、二本を同時に観たことで、時代を経ても変わらない冤罪を生むメカニズムと人間の愚かさみたいなものが浮き彫りになり、意義深い二本立てだったと思います。

帝銀事件 死刑囚 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: NIKKATSU CORPORATION(NK)(D)
  • メディア: DVD
日本の黒い夏 [冤enzai罪] [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 日活
  • メディア: DVD

『ミツバチのささやき』と『エル・スール』 於・下高井戸シネマ
恥ずかしながらビクトル・エリセという監督のこともこの二本の映画のことも知らなかったのですが、アデライダ・ガルシア=モラレス著『エル・スール』(インスクリプト 2009.2)を読んだときに、この二作品のDVD-BOXのチラシが入っていて、ものすごく観たかったのです。でも、近所のTSUTAYAを何軒か回ってもおいていなくて(渋谷ならあったのかしら)、思い切ってDVD-BOXを買ってしまうかどうか迷っていたときに早稲田松竹でこの二本立てがあることを知り、やった~と思ったのもつかの間、日程的に行けなくてガックリ落ち込んでいたのです。それから約半年、下高井戸シネマでこの二本がかかりようやく観にいけた、名画座ってありがたいなの二本なのです。

ミツバチのささやき [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 東北新社
  • メディア: DVD
エル・スール [DVD]

エル・スール [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東北新社
  • メディア: DVD
エル・スール

エル・スール

  • 作者: アデライダ ガルシア=モラレス
  • 出版社/メーカー: インスクリプト
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 単行本

本題の「もしもアナタが名画座の館主だったなら」はまた次回。

※追記 23:46
『時をかける少女』と『サマーウォーズ』の項で細田守監督を押田監督と書いてしまったので修正しました。いっつも押井守監督とごちゃになって、守で引っ張られて押田になってしまう細田監督。


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男の子の映画と男の映画 [映画・DVD]

最近観た映画の感想を雑にまとめておく。

「アイアンマン2」
大人になっても壮大なるヒーローごっこ。バカバカしくておもしろい。もしかするとものすごい反戦映画だったりして。
スカーレット・ヨハンソンのお尻のラインが完璧。このシリーズ、グウィネスが可愛くないのが残念。

「ソナチネ」
「アウトレイジ」で初めて北野映画に興味を持ち、予習のためDVDで。
沖縄でマッタリするシークエンスに飽きかけたところで、海辺のトントン相撲のシーン。ここで心を掴まれた。ラストシーンも好みでした。
勝村さんが出ていることを見始めるまで知らなくて、ヤクザ映画に勝村さん?と驚く。今の時代に見ると実は勝村さん演じた若者が一番得体が知れなくて不気味な存在に感じられた。拳銃で相対して殺すより手榴弾を放り込む方を好み、男の生き様みたいなものも全く意識しておらず、ヤクザをやめたがっている主人公に対してさらっと逡巡なくヤクザをやっている感じ。勝村さんのキャラの軽さがこの役柄にマッチしていた。

「アウトレイジ」
わかりやすかったし、単純におもしろかった。大物感のある役柄のイメージが強い石橋蓮司がこの作品では小物感のある人物を演じているところとか、中華料理屋での暴力シーンとか、ラストシーンの三浦友和の着ているものの格好悪さとか。
ヤクザの抗争も企業の買収合戦も構造は同じなのねと思いました。椎名桔平が車に乗せられ海沿いの道に連れて行かれるシーンが好きです。エグさも含め。

※タイトル変更しました。 2010.7.13


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「愛を読む人」 [映画・DVD]

「愛を読む人」 監督:スティーヴン・ダルドリー
出演:ケイト・ウィンスレット、デヴィッド・クロス、レイフ・ファインズ

原作は、1995年に発表されたドイツの作家ベルンハルト・シュリンクの『Der Vorleser』(邦題: 『朗読者』 新潮社 2000.4 / 新潮文庫 2004.6)。ドイツだけでなくアメリカでも日本でもベストセラーになり、もっと早く映画化されてもおかしくなかった作品です。
映画化されたことを知ったときは正直、なぜ今?と思いましたが、映画を観たらわかりました。ああ、この作品はケイト・ウィンスレットを待っていたのだと。
それくらいケイト・ウィンスレットが素晴らしかった。とりわけ、映画前半、21歳年下のマイケルを魅了するケイト=ハンナの魅力的なこと!
出会ってまもなく誘惑するようにマイケルを見つめるハンナ、ささいなことでマイケルと喧嘩になってしまうハンナ、ベッドの上でマイケルの朗読を待つハンナ、同級生の女の子と親しくなってゆくマイケルと気持ちがすれ違い始めたときのハンナ、どの表情も素晴らしかった。

ケイト・ウィンスレットを見るためだけにでも観ていい映画でした。

ところで、これから原作を読まれる方は『愛を読む人』(パール・アブラハム著)というタイトルのまったく別の小説が存在していますので、どうぞお間違えなく。


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「SMOKE」 [映画・DVD]

ポール・オースターがニューヨーク・タイムズに書いた短篇「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」を読んだウェイン・ワンからのアプローチにより、オースター自身が脚本を手がけた作品。

ブルックリンで煙草店を営みながら毎日同じ時刻に同じ街角をカメラに納めるオーギー、煙草店の常連客で新作を書けずにいる作家ポール、ポールの命の恩人となった少年ラシード、生まれたばかりのラシードを捨て家を出て行った父親サイラス、18年半ぶりに会いにきたオーギーの昔の恋人ルビー。
オーギーにもポールにもラシードにも、他の登場人物にも、それぞれにそれぞれの物語があり、もちろんそれぞれの物語は別のものなのだけれど、ある部分では深く重なり合う。重なり合うことで、それぞれはまた新たな物語を紡ぐことになる。それは偶然に導かれるようにでもあり、定められたことのようにでもある。

続きを読む(※原作にも触れていますので予断なく映画を愉しみたい方はご遠慮ください)


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歩いても歩いても [映画・DVD]

「歩いても歩いても」 2008 日本
監督・原作・脚本・編集:是枝裕和

本谷有希子の「偏路」というお芝居の中に「親戚の家はグロテスク」という言い回しが出てくる。子ども時代に親戚の家というものに対して感じたことを主人公が歌にした中の一節で、お芝居の中ではかなり笑いを誘うフレーズとなっていたのだけれど、この、親戚の家に対して感じてしまうグロテスクさというのは、大人になって一人暮らしをするなり、自分の家族を築くなりしたときに「実家」というものに対して感じるものと同じかもしれない。
だって、実家との距離ってなんか微妙だ。

「歩いても歩いても」は、15年前に亡くなった長男・純平の命日に家族が集った横山家の一日を描いた映画。
今は二人で暮らす開業医だった父・恭平と母・とし子、長女・ちなみ、ちなみの夫と子どもたち、次男・良多、結婚して間もない良多の妻・ゆかり、ゆかりの連れ子・あつし。
集まる家族のため、母は台所へ立って腕をふるい、ちなみはそれを手伝っている。そこへ、父への反発心ゆえ実家から足の遠のいていた良多が久しぶりに帰郷する。

亡くなった兄と比較されてきたことへの良多のわだかまり、子連れで再婚したゆかりの立場の微妙さ、年老いた両親とちなみ夫婦との間に持ち上がっている同居話、否応なく目についてしまう両親の老いなどなど、「実家」との距離の取り方の難しさを感じさせる、些細でありながら些細だからこそ棘のようにチクリとささるエピソード満載。

是枝監督のお母さんに対する個人的な思いから出発した映画のようだが、誰しも、「家族」というものに対しては何かしらの思いがあるものだし、描かれている横山家は、家族の問題としてはわりに典型的な要素が盛り込まれているため、観る人それぞれ、どこかしらに共感できたり身につまされたりするポイントがあるのではないでしょうか。

実家を毛嫌いしているうちはまだまだコドモで、実家に感じてしまうグロテスクさを愛おしむことができるようになればオトナ。是枝監督はきっとオトナになったんですね。わたしはまだまだ、この映画で描かれているような境地には達せてないなぁ。
歩いても歩いても・・・。


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魔法の時間 [映画・DVD]

「ザ・マジックアワー」 脚本と監督:三谷幸喜

三谷映画の楽しみの一つは小ネタ探しだったりしますが、今回は前作「THE有頂天ホテル」に比べると小ネタは少ない印象でした。個人的に小ネタとして好きだったのは、鈴木京香の真知子巻き。小ネタは少なくても、メインの部分で文句なくおもしろかったです。笑いました。理想の上司、佐藤浩市があんなことになるなんて。

伏線が全てきれいに回収されていくところはさすが三谷幸喜、見事です。ただ、舞台であれば役者さんが動いていく中でこんな風に伏線が回収されていくとホントに爽快なのですが、映画でこれをやられると、破綻がなさすぎて引っ掛かりがないので、全く後に残るものがないです。映画館の中だけで完結しちゃう。まぁそれはそれでありですが。

とにもかくにも、三谷幸喜の喜劇愛が感じられるよい映画でした。


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幻影に惑う [映画・DVD]

「幻影師アイゼンハイム」 2006 アメリカ・チェコ
監督:ニール・バーガー
原作:スティーヴン・ミルハウザー著「幻影師、アイゼンハイム」(柴田元幸訳 『バーナム博物館』 白水社 2002.8 白水Uブックス 所収)

19世紀末のウィーンを舞台にした、ひとりの男と公爵令嬢の身分違いの恋の物語。男が初恋の相手である公爵令嬢と再会したとき、彼女は皇太子の婚約者となっていて・・・。
これだけだとありがちなラブストーリーに終わりそうですが、ミルハウザーの「幻影師」の枠を借りて、主人公の男が天才幻影師アイゼンハイムであることでちょっとおもしろくなっています。
原作の読後感は、ミルハウザーの創りだす幻影に取り込まれてしまい霧の中を浮遊するような感覚に陥りますが、映画の方は観終わると爽快な気分に。
あまり展開を先読みせずに、皇太子側の人間でありながら徐々にアイゼンハイムに魅せられてしまうウール警部の目線で爽快な、「してやられた感」を味わうのが吉でしょうか。


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日々の食卓 [映画・DVD]

『いのちの食べかた』 ドイツ・オーストリア
監督・撮影 ニコラウス・ゲイハルター
原題 Our daily bread

わたしたちの日々の食卓にのる食べ物がどのように生産・加工されているのか、いくつかの食べ物についてその工程の一部を切り取って集めたドキュメンタリーです。取り上げられている食べ物は牛、牛乳、豚、鶏、卵、鮭、りんご、キャベツ、アスパラガス、トマト、岩塩など多岐に渡ります。原題には宗教的な意味合いも込められているようで、邦題もなかなか説教臭いものとなっていますが、映画自体は作り手側が観客に説教をするのではなく、自分で自分に説教できるようになっています。

「いのちを食らうということの意味」を考えたいなどと思いながら観に行ったのですが、どうも自分はフワフワしてたなと、観終わってから思いました。日々の食事はそんなにロマンチックなものじゃないんだなと。
黄色いひよこ達が、ピッチングマシンから飛び出すボールのごとく、ポンポンと機械から吐き出されて出荷用にかごに入れられていく様は、まるでアートでした。この映像はこういうアートなんですと説明されたなら、アホまるだしで「う~ん、アートだね」と頷いてしまうなと思いながら、いかんいかんアートじゃないんだって、現実の作業工程の一部なんだってと自分に言い聞かせるという始末。

「いのちの食べかた」を考えるというとき、生き物のいのちを奪ってという部分に意識がいきがちだったのだけれど、現代の食べ物のほとんどは食べるために生み出されているという部分にもっと目を向けないといけないなと、ずらり並んだ孵卵器や牛の精子採取の場面を見て思いました。食べ物を生み出す現場を自分はいかに知らなかったかということを思い知りましたね。

全編を通して気になったのは、機械の音。人物の会話や音楽も排した中で、どの作業工程の中にも当然入り込んでいる機械の稼動音だけが響きます。騒音から身を守るためヘッドホンをつけて作業をしている作業員の姿も映し出されます。
本来は、人間をつらい労働から解放するための機械のはずが、効率重視の生産ラインの中でまず機械が配置され、それに合わせて人間が組み込まれているので、労働環境は逆に悪化しているんですよね。特にキャベツの収穫の場面ではそれが顕著でした。食べ物を安価に入手できる裏には、過酷な労働に支えられた効率的な大量生産の現場があるということですね。

いずれも今に始まったことじゃないけれど、知らなかったり忘れていたりするんだよねということを認識させてくれる映画でした。


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ザ・青春映画 [映画・DVD]

『パッチギ!』 2004 日本
監督 井筒和幸
出演 塩谷瞬 高岡蒼佑 沢尻エリカ 楊原京子  尾上寛之  小出恵介 波岡一喜 オダギリジョー  光石研

ウルフルズに「ええねん」という唄がある。以前音楽番組でウルフルズがこの「ええねん」を唄ったときのこと。コメントを求められたMr.Childrenの桜井和寿さんが、「自分は何をグダグダ唄っているんだろうと思った」と、この唄のストレートな良さよさを評していたことがあった。
グダグダ唄うMr.Childrenの音楽が好きなように、グダグダこねくっている映画もそれはそれで好きなのだけれど、「ええねん」のようにド直球なこの映画を観て、映画はやっぱりこうでなくっちゃと思いました。ハイ。

パッチギ ! スタンダード・エディション

パッチギ ! スタンダード・エディション

  • 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
  • 発売日: 2005/07/29
  • メディア: DVD


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『ヒロシマナガサキ』 [映画・DVD]

『ヒロシマナガサキ』 2007 アメリカ
製作・監督・編集 スティーヴン・オカザキ

14名の被爆者と原爆投下に関与した4名のアメリカ人の証言を軸に、核兵器の脅威へ警鐘を鳴らすドキュメンタリー映画。

被爆者が被爆の体験を語ることは、どれだけ体力を消耗し、精神的苦痛を伴うものであろうか。被爆直後の凄惨な街の様子、亡くなってしまった家族への思い、治療の痛み、被爆者への差別。それでも語ってくださったことにまずは感謝したい。

私にとって最も印象に残ったのは、治療の様子を映した資料映像。
何人かの証言者が、自身の受けた傷や被爆当時の治療の様子を語り、その後に当時の治療の様子が映された資料映像や写真が挿入されるのである。一人ひとりの証言を聞くだけでも、被爆者というひとくくりではない一人ひとりの人生を感じられるのであるが、当時と現在のひとつながりの時間の経過をこうして見せられると、その人の人生の重みがより強く感じられた。

そして、被爆後治療を受ける少年時代の吉田勝二さん(証言者)の資料映像と、着物姿の女性の写真は、私の記憶に強く訴えかけた。この二つを見た瞬間、「小学生時代、小金井公会堂で見た」という記憶が鮮明によみがえったのである。
これらはアメリカ政府が記録として残していた映像や写真であり、戦後、時を経て公開され、原爆についての写真集などにもおさめられているかと思うが、私が当時見たのはおそらく、記録映画『にんげんをかえせ』の中でだったのだと思う。
この映画『ヒロシマナガサキ』が、自分の中に眠っていた戦争についての記憶(戦後生まれなのでもちろん直接の体験ではなく、五次的、六次的な記憶であるが)と現在とを結びつけてくれた。

この映画を観た直後にたまたま読んだ本*1で知ったところによると、着物姿の女性は沼田鈴子さんという広島の語り部の方で、『にんげんをかえせ』の中に自分の姿があるのを見て、語り部となることを決意されたそうである。

映画の冒頭、1945年8月6日・8月9日に何が起きたかを知らない若者たちの姿を挿入したオカザキ監督の意図を、真剣に受け止めたい。
そして、語ってくれている被爆者の方、語れずに亡くなった方、今なお語れずにいる方、たくさんの方々に思いを馳せたい。


*1 斎藤貴男, 知念ウシ, 沼田鈴子, 広岩近広 著 『あなたは戦争で死ねますか』 日本放送出版協会 (生活人新書) 2007.8


あなたは戦争で死ねますか (生活人新書 230)

あなたは戦争で死ねますか (生活人新書 230)

  • 作者: 斎藤 貴男
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本


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