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日々の食卓 [映画・DVD]

『いのちの食べかた』 ドイツ・オーストリア
監督・撮影 ニコラウス・ゲイハルター
原題 Our daily bread

わたしたちの日々の食卓にのる食べ物がどのように生産・加工されているのか、いくつかの食べ物についてその工程の一部を切り取って集めたドキュメンタリーです。取り上げられている食べ物は牛、牛乳、豚、鶏、卵、鮭、りんご、キャベツ、アスパラガス、トマト、岩塩など多岐に渡ります。原題には宗教的な意味合いも込められているようで、邦題もなかなか説教臭いものとなっていますが、映画自体は作り手側が観客に説教をするのではなく、自分で自分に説教できるようになっています。

「いのちを食らうということの意味」を考えたいなどと思いながら観に行ったのですが、どうも自分はフワフワしてたなと、観終わってから思いました。日々の食事はそんなにロマンチックなものじゃないんだなと。
黄色いひよこ達が、ピッチングマシンから飛び出すボールのごとく、ポンポンと機械から吐き出されて出荷用にかごに入れられていく様は、まるでアートでした。この映像はこういうアートなんですと説明されたなら、アホまるだしで「う~ん、アートだね」と頷いてしまうなと思いながら、いかんいかんアートじゃないんだって、現実の作業工程の一部なんだってと自分に言い聞かせるという始末。

「いのちの食べかた」を考えるというとき、生き物のいのちを奪ってという部分に意識がいきがちだったのだけれど、現代の食べ物のほとんどは食べるために生み出されているという部分にもっと目を向けないといけないなと、ずらり並んだ孵卵器や牛の精子採取の場面を見て思いました。食べ物を生み出す現場を自分はいかに知らなかったかということを思い知りましたね。

全編を通して気になったのは、機械の音。人物の会話や音楽も排した中で、どの作業工程の中にも当然入り込んでいる機械の稼動音だけが響きます。騒音から身を守るためヘッドホンをつけて作業をしている作業員の姿も映し出されます。
本来は、人間をつらい労働から解放するための機械のはずが、効率重視の生産ラインの中でまず機械が配置され、それに合わせて人間が組み込まれているので、労働環境は逆に悪化しているんですよね。特にキャベツの収穫の場面ではそれが顕著でした。食べ物を安価に入手できる裏には、過酷な労働に支えられた効率的な大量生産の現場があるということですね。

いずれも今に始まったことじゃないけれど、知らなかったり忘れていたりするんだよねということを認識させてくれる映画でした。


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