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「SMOKE」 [映画・DVD]

ポール・オースターがニューヨーク・タイムズに書いた短篇「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」を読んだウェイン・ワンからのアプローチにより、オースター自身が脚本を手がけた作品。

ブルックリンで煙草店を営みながら毎日同じ時刻に同じ街角をカメラに納めるオーギー、煙草店の常連客で新作を書けずにいる作家ポール、ポールの命の恩人となった少年ラシード、生まれたばかりのラシードを捨て家を出て行った父親サイラス、18年半ぶりに会いにきたオーギーの昔の恋人ルビー。
オーギーにもポールにもラシードにも、他の登場人物にも、それぞれにそれぞれの物語があり、もちろんそれぞれの物語は別のものなのだけれど、ある部分では深く重なり合う。重なり合うことで、それぞれはまた新たな物語を紡ぐことになる。それは偶然に導かれるようにでもあり、定められたことのようにでもある。

相手の物語を信じることで自らの人生も豊かになる、そんなことを教えてくれる映画だった。
映画の中のセリフにはないのだが、「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」の中の次の一節が出発点なのだと思う。

「誰か一人でも信じる人間がいるかぎり、本当でない物語などありはしないのだ。」

映画の冒頭、オーギーの煙草屋の常連客たちにポールが、煙の重さを計る男の話を披露するシーンがある。
観終わって、余韻にひたりながら想像する。自分が死んで燃えてゆくときの煙の重さはどれくらいだろうか。その重さに、意味はあるといえばあるし、ないといえばない。

この映画の脚本「スモーク」及び「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」の収録されているポール・オースター著, 柴田元幸他訳 『スモーク&ブルー・イン・ザ・フェイス』(新潮社 1995.9 新潮文庫)は、残念ながら出版社品切れ増刷未定なので古書店か図書館でどうぞ。
「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」は、村上春樹, 柴田元幸著 『翻訳夜話』(文藝春秋 2000.10 文春新書)の中に、原文、柴田元幸訳、村上春樹訳が収録されています。


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コメント 4

ken

原作の中の“一節”は、金言ですね。素晴らしい。
それにしても歳を重ねることの楽しさを知る1本でした。
あ、個人的には、ルビーの娘を演じたのがまだ若いアシュレイ・ジャドだった
ことに気付いてビックリしました!w
by ken (2008-10-22 14:00) 

デクノボー

この一節はオースターの哲学ですね。

アシュレイ・ジャド、母に悪態をついているときの憎々しげな表情と、その後の何ともいえない表情がよかったですね。
by デクノボー (2008-10-22 23:53) 

ばくはつごろう

やっと観ました。
なんとなく、音は消して映像だけで楽しみたい感じでしたわ。
そのくらいカメラワークが素晴らしかった。
by ばくはつごろう (2008-11-08 21:45) 

デクノボー

音は消して映像だけ、それやってみよう。
by デクノボー (2008-11-09 14:14) 

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