SSブログ

『赤目四十八瀧心中未遂』 [映画・DVD]

『赤目四十八瀧心中未遂』 2003 日本
監督 荒戸源次郎
原作 車谷長吉著 『赤目四十八瀧心中未遂』 文藝春秋 1998.1
出演 大西滝次郎 寺島しのぶ 新井浩文 麿赤兒 大楠道代 内田裕也

『ゆれる』や『松ヶ根乱射事件』で新井浩文さんについて書いたところ、この作品の新井浩文もぜひと何人かの方から薦められてのDVD鑑賞。
やっぱり見る度に、顔つきとか放つ雰囲気が違います。印象的なのは目でしょうか。少し前に放映されていたリクナビNextのTVCMでも感じたのですが、何やら得体の知れないものがその目に宿っているような気がして仕方ありません。『血と骨』や『ゲルマニウムの夜』も押さえておこうと思います。

原作は第119回直木賞を受賞した車谷長吉の同名作品ですが、受賞当時、エンタメ系の直木賞より純文学系の芥川賞がふさわしいのではというのがもっぱらの評判だったようです。ということで映画も非常に文学的。
映画全体の雰囲気は『ツィゴイネルワイゼン』とどことなく似ているなと思ったら、それもそのはず、監督の荒戸さんは『ツィゴイネルワイゼン』のプロデューサーさんだったのですね。
田口久美子著『書店風雲録』(本の雑誌社 2003.12)の中で、リブロにお勤め時代の車谷さんの下駄履きの変わり者ぶりが記されており、映画の中の大西滝次郎演じる主人公生島の下駄履き姿と車谷さんが重なります。

生島が串に刺した臓物のぬめりが赤黒く光っているシーンが印象的でした。
映画も原作も作品自体は被差別をメインに扱っているわけではなくさらにもっと奥深いところを描いているのですが、生島に臓物を届ける犀ちゃんやひたすら串に肉を刺し続ける生島の姿に、そうなんだよなこういう肉の仕事って底辺の仕事とされてきたんだよなということに、そしてそれは何故なんだろうということに思いを馳せました。

こんな表面的なのん気に過ぎる感想では、この映画の素晴らしさは何一つ伝わらないですね。それを伝えることばも人間的深みもわたしは到底持ち合わせておりません。溜息。

赤目四十八瀧心中未遂 [DVD]

赤目四十八瀧心中未遂 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ネオプレックス
  • メディア: DVD
赤目四十八瀧心中未遂

赤目四十八瀧心中未遂

  • 作者: 車谷 長吉
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/02
  • メディア: 文庫


nice!(1)  コメント(6)  トラックバック(1) 
共通テーマ:映画

『かもめ食堂』 [映画・DVD]

『かもめ食堂』 2006 日本
脚本・監督 荻上直子
原作 群ようこ
出演 小林聡美 片桐はいり もたいまさこ

フィンランドの食堂と聞いて、港町の寂びれた大衆食堂を勝手にイメージしていた私はまず、「かもめ食堂」のカフェっぽさに驚いた。あのクリームがかったブルーのインテリアはまるでILLMUS。
日本の大衆食堂を舞台にしたやや湿り気のある人情もの映画、ニューヨークだとかパリだとかのカフェを舞台にさらりと通り過ぎる人間模様を描いた映画、というものが仮にあるとして、この映画はそのちょうど中間というイメージでしょうか。

サチエ(小林聡美)はフィンランドのヘルシンキで食堂を開く。メインメニューはおにぎり。最初はなかなかお客さんが来ないのだが、ある日、日本かぶれの青年がやってくる。それを皮切りに、訳あってフィンランドへやってきたミドリ(片桐はいり)や、これまた訳あってやってきたマサコ(もたいまさこ)、さらに訳ありのフィンランド人中年女性、徐々にかもめ食堂に人が集まってくる。

「コピ・ルアック」のおまじないやサチエの握るおにぎりに、誰かが心を込めたものを食するのって正しく生きる基本なんだなと思う。サチエの生き方を見ていると、生きるって日々の積み重ね、それ以上でも以下でもないのだということに気づかされる。ラストシーンはきっとサチエのあのことばで終わるのだろうなとわかるのだけど、予想通りのそのことばにふんわりと温かい気持ちになった。

人はみなけっこう善良に生きているのだ。

この映画を気に入った方には、小林聡美さん主演のドラマ『すいか』もオススメ。「ハピネス三茶」という下宿を舞台にした、悪い人は出てこず、事件らしい事件など起こらない温かいドラマ。片桐はいりさん、もたいまさこさんもナイスな脇役として登場します。

かもめ食堂

かもめ食堂

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2006/09/27
  • メディア: DVD

すいか DVD-BOX (4枚組)

すいか DVD-BOX (4枚組)

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2003/12/21
  • メディア: DVD


タグ:映画
nice!(2)  コメント(6)  トラックバック(1) 
共通テーマ:映画

『ツィゴイネルワイゼン』 [映画・DVD]

『ツィゴイネルワイゼン』 1980 日本
監督 鈴木清順
原作 内田百間「サラサーテの盤」
出演 原田芳雄 大谷直子 藤田敏八 大楠道代 麿赤児

鈴木清順監督作品を初体験。
『ヒステリア』というお芝居を観に行ったときのポストトークの中での、「芝居の始まり方が『ツィゴイネルワイゼン』の始まり方と似ている」というRollyの話を聞いて、興味を持っていたところに、「日本女子のソコジカラ」と題し着物をテーマに集められた一連の作品の中でこの映画が上映されることを知り、渋谷ユーロスペースへ観に行く。着物がテーマなだけに着物姿の女性も見受けられ、レイトショーにもかかわらず立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。

サラサーテ演奏の「ツィゴイネルワイゼン」のSP盤を行きつ戻りつさせる冒頭から惹き込まれ、最初のセリフにたしかに『ヒステリア』の始まりのセリフと似ていると思い、汽車のシーンにこれから何が始まるのかとドキドキし、女の死体が上がり原田芳雄登場の海岸のシーンに緊張感を煽られ、赤い蟹になんじゃこりゃと度肝を抜かれ、「うなぎが食べたい」という唐突なセリフは何かのメタファー?と思い、赤く染まる骨の話は今後どう絡んでくるのだろうと思いを馳せ、必死にストーリーについていこうとかなり力んで観ていたのだが、途中でようやくあぁ追いかけるべきストーリーなどないのだということに気づいて、あまり必死に観ないで身を委ねることにした。
蟹やら骨やらちぎりこんにゃくやら鱈の子やら解釈したくなるようなモチーフが満載ではありますが、あまりいろいろ解釈しようとせず、ただただ身を委ねると楽しめる映画なのでしょう。

聞こえないはずのものが聞こえたり、聞こえるはずのものが聞こえなかったり、見えないはずのものが見えたり、見えるはずのものが見えなかったり、生と死、正気と狂気、夢と現といった境界を行きつ戻りつし、観終わるとなんだかふわふわと地に足がつかない、心地がいいんだか悪いんだかよくわからないような感覚に襲われた。これは鈴木清順の世界を堪能したということなのだろうか。


タグ:映画
nice!(0)  コメント(2) 
共通テーマ:映画

『松ヶ根乱射事件』 [映画・DVD]

『松ヶ根乱射事件』 2006 日本
監督 山下敦弘
脚本 山下敦弘 向井康介 佐藤久美子
出演 新井浩文 山中崇 木村祐一 川越美和 キムラ緑子 烏丸せつこ 西尾まり 安藤玉恵 康すおん 光石研 でんでん 三浦友和

以前から気になっている俳優、新井浩文さん主演ということで観に行く。山下監督(『リアリズムの宿』『リンダ リンダ リンダ』)の作品を観るのは初めて。
なかなかおもしろいテイストだった。人間のいや~な部分を描いていて、まともに受け止めればやや重い映画でもあるのだけれど、まともに受け止めなくてもいい余地も多々あって、ラストシーンも、まともに受け止めれば深くもあり、すべてがコメディでそこまでが長いフリと受け止めればラストは壮大(?)なオチでもあるという、いろいろに読み取れる映画でした。

新井浩文はやはりいいです。脇の女優陣もよかった。キムラ緑子さんはさすがにうまいし、川越美和さんの枯れ具合には驚いたけれど、いい感じの枯れ具合でこの映画全体のテイストは彼女が創り出しているといってもいいのではないかと思いました。


nice!(0)  コメント(4) 
共通テーマ:映画

『リトル・ミス・サンシャイン』 [映画・DVD]

『リトル・ミス・サンシャイン』 2006 アメリカ
監督 ジョナサン・デイトン ヴァレリー・ファリス
脚本 マイケル・アーント
出演 グレック・キニア スティーヴ・カレル トニ・コレット ポール・ダノ アビゲイル・ブレスリン アラン・ラーキン

笑いどころと泣きどころのある笑って泣ける映画ではなく、笑いすぎて涙が出るという映画でもなく、笑いと涙が切り分けられずに混じる笑いながら泣ける映画だった。

おじいちゃんの「たくさんの女と・・・」というくだりは、結構人生の真実かもしれない。
あのバスの黄色は、未来の幸せのイメージという気がした。

それから、伯父さん役のスティーヴ・カレルがナンニ・モレッティになんだか似ているなぁとずっと気になった。


タグ:映画
nice!(0)  コメント(2) 
共通テーマ:映画

『マリー・アントワネット』 [映画・DVD]

『マリー・アントワネット』 2006 アメリカ・フランス・日本
監督・製作・脚本 ソフィア・コッポラ
原作 アントニア・フレイザー
出演 キルスティン・ダンスト ジェイソン・シュワルツマン マリアンヌ・フェイスフル

予告編やTVスポットからもわかるように歴史ものの映画ではなく、マリー・アントワネットという一人の女の子の成長物語。完全に女子向けの映画です。
このテイストでいって断頭台はいったいどう描くのかと心配していたら・・・。でも、この映画としてはあの終わり方でよかったと思います。
本物のヴェルサイユ宮殿で撮影したからこそ、あのテイストでも成立した映画のような気がします。公式HPに載っていた、ヴェルサイユはパークハイアット東京よりも自由に撮影できたというソフィアのコメントには笑いました。

ソフィア・コッポラは女の子をかわいく撮るのがうまいですね。特に、3~4人の女の子が一つの画面の中にいるような場面では、若い子のキラキラした感じがよく出ています。『ヴァージン・スーサイズ』でもそうだったけれど、この映画でもそんなシーンがいくつかありました。
オーストリアからフランスへ嫁ぐ道中や夜遊びからの帰り道に、馬車の車窓から外を眺めるマリー(キルスティン・ダンスト)の表情もよかったです。

前半では、フランス王室の独特の風習にとまどい、お世継ぎを産むことを期待されながらも夫婦生活がうまくゆかず、といったところが描かれるのですが、お世継ぎ問題のところで感じたのは、子どもを産むことへプレッシャーをかけてくるのは、男性側の実家よりもむしろ女性側の実家だったりするんだよねということ。もちろん、マリーの場合は政略結婚なのだから当然といえば当然のことではありますが、あの実家からのプレッシャーのかかり方に、共感をもってマリーを見る女性は多いのではないでしょうか。

私はいつものように、レディースデイの水曜日、仕事帰りに一人でサクッと観に行ったのですが、普段は私同様の映画の見方をする女性も、この映画に関しては、休日に女友だちと観に行って、映画の後にケーキでも食べながら、「ケーキおいしそうだったね」とか「靴かわいかったね」とかキャピキャピしたり、厚生労働大臣発言なんかもふまえつつ、「やっぱり女は子どもを産んでなんぼってことなわけ?」と愚痴ったりするとよいのではないでしょうか。


タグ:映画
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

ロドリゴ・ガルシア監督 『美しい人』 [映画・DVD]

『美しい人』 2005 アメリカ
監督・脚本 ロドリゴ・ガルシア
出演 エルピディア・カリーロ ロビン・ライト・ペン リサ・ゲイ・ハミルトン ホリー・ハンター
アマンダ・セイフライド エイミー・ブレナマン シシー・スペイセク キャシー・ベイカー 
グレン・クローズ ダコタ・ファニング

『彼女を見ればわかること』のロドリゴ・ガルシア監督作品。
原題は「9 lives」。9人の女性たちの人生の中の一つの場面を切り取った連作短編小説集のような映画。後から知ったのだけれど、一話ずつがワンシーンワンカットらしい。
見せられるのはその人の人生のほんの一場面で細かい状況などは説明されない。にもかかわらず、彼女たちのそれまでの人生や、今抱えているものなどが痛いほどに伝わってくる。
必ずしも幸せな状況にいる訳ではないのに、瞬間放たれるそれぞれの生の煌めきを見事に描いた作品。

私にとっての映画を観る楽しみは、まさに、こういう作品を一人静かに劇場で観ることなのだとしみじみ噛み締めた、極上の時間だった。帰りがけ、久しぶりに映画のパンフレットを購入してしまった。

ちなみに、監督のロドリゴ・ガルシアはガルシア=マルケスの息子だそうだ。映画とは直接関係ないのだが、以前から欲しいけれど高いんだよなぁ思っていた、ガルシア=マルケス著『百年の孤独』も帰りがけに勢いで買ってしまった。


タグ:映画
nice!(0)  コメント(2) 
共通テーマ:映画

『死ぬまでにしたい10のこと』 [映画・DVD]

『死ぬまでにしたい10のこと』 2002 カナダ・スペイン
監督・脚本 イザベル・コヘット
製作総指揮 ペドロ・アルモドバル ほか
出演 サラ・ポーリー マーク・ラファロ スコット・スピードマン レオノール・ワトリング デボラ・ハリー
    アマンダ・プラマー マリア・デ・メディロス アルフレッド・モリーナ ジュリアン・リチングス

深夜にテレビ放映していたのを録画して観た。
『ラブ・アクチュアリー』が劇場公開になったとき、ヒュー・グラントが出演するラブ・コメディという情報とポスターのイメージだけから、私は敬遠していたのだけれど、映画の趣味の合う友人に薦められて観てみると、予想していた軽くて甘い感じとは違う映画で、結果観てよかったと思った経験がある。
この映画も同様で、邦題とピンク系のポスターから判断して、まぁ安い感じの映画かなと勝手に判断し、敬遠していた。しかし、よくおじゃましている映画ブログの記事を読んで、観てみようかと思ったところでのテレビ放映。そして結果観てよかった。

主人公のアンは23歳の若さで、ガンで余命2ヶ月と医師から宣告される。そこで死ぬまでにしたい10のことをリストアップしていくのだが・・・。
病気の進行でかなり辛そうな場面も描かれていたりはするのだけれど、悲壮感は伴わず、アンの生活が淡々と描かれている。
すごくいいなぁと思ったのは、アンが夫や二人の娘をすごく愛しているのが感じられたことと、アンが関わった人たちが少ない場面でもしっかり描かれているところ。そして、周りの人間を感じることによって、アンという人をより近く感じることができる。アンと登場人物の誰かが話しをする場面では、最後アンの表情ではなく、相手の表情で終わるのだが、それでかえってアンの心情が伝わってきた。

アンがコイン・ランドリーで出会った男性を演じるマーク・ラファロは、『イン・ザ・カット』のときにも思ったのだが、不思議な色気のある俳優さんだ。ぱっと見て印象に残るタイプではないのだけれど、女性にもてる役柄がすごくはまる。

『彼女を見ればわかること』を好きな人は、この映画も好きなような気がする。漠然とだけれど。

死ぬまでにしたい10のこと

死ぬまでにしたい10のこと

  • 出版社/メーカー: 松竹
  • 発売日: 2004/04/24
  • メディア: DVD


nice!(0)  コメント(2) 
共通テーマ:映画

『蟻の兵隊』 [映画・DVD]

『蟻の兵隊』 2005 日本
監督 池谷薫
出演 奥村和一 金子傳 村山隼人 藤田博 百々和 森原一 宮崎舜市 増本敏子 奥村寿

日本のポツダム宣言受諾後も武装解除を受けることなく、中国の内戦を戦わされた中国山西省残留日本兵の一人である奥村和一さんを追いかけたドキュメンタリー映画。
ある本を読んで残留日本兵の問題を知った日の夜に、NEWS23でこの映画が取り上げられているのを見て、ささやかな啓示と感じ、週末に観てきた。
観客には戦争を体験しただろう年齢の方が多く見られた。
この映画の感想を述べるのはとても難しい。

私の祖父は、父方の祖父も母方も祖父も、私が生まれたときにはもうすでに亡くなっていて
私はおじいさんたちの話をほとんど聞いたことがない。
この映画を見て、自分の祖父はどんな人物で戦時中をどう過ごしたのだろうかということを知りたくなった。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

『ゆれる』 [映画・DVD]

『ゆれる』 2006 日本
監督・脚本 西川美和子
出演 オダギリジョー 香川照之 伊武雅刀 新井浩文 真木よう子 木村祐一 ピエール瀧 田口トモロヲ 蟹江敬三 

揺さぶられる映画だった。心理的にエグい映画です。監督・脚本が女性だから出せるエグさだと思う。
ひとつの事件が、見ている人間の見方によってまったく違ったものに見えるという芥川龍之介『藪の中』のような物語。『藪の中』では視点は三人の異なる人間によるものだが、『ゆれる』ではオダギリジョー演じる猛の視点が揺らぐことによって、事件の真相がゆらゆらと揺らいでいる。

素晴らしいのは猛の兄稔を演じる香川照之さんの演技。
この映画では猛の心の揺れを、オダギリジョーが表現するというより、猛が見ている結果であるところの稔を香川照之が演じわけることによって表現していて、その役割を香川さんが見事に果たしている。なので、この映画を見るときは猛と同じ視点に立つと存分に楽しめます。
何を信じるかで世界はこうも変わってしまうのだということを教えてくれる映画でした。
ラストシーンの稔の表情を私は信じたい。

ところで、ガソリンスタンドの店員岡島を演じている新井浩文さんは、作品ごとに印象が全く違う。顔つきまで別人なので驚く。


nice!(1)  コメント(4) 
共通テーマ:映画

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。